ユージニア
恩田 陸
---------------------------------------------------------------------
ユージニア。私のユージニア。
私はあなたと巡りあうために、ずっと一人で旅を続けてきた。
その夏、青澤家の米寿の祝いの日、17人の人々が毒殺された。
青澤家に訪れていた人たちは、たった二人しか生き残れなかった。青澤家の手伝いをしている女性、そして、青澤家の娘で、盲目の美少女。
無差別殺人。
残された「ユージニア」という謎の詩。
街中を恐怖に包んだ事件は、その後、犯人の自殺という行動により結末を迎えた。
それから長い月日が経ち、もう一度、事件を語るときがくる。
生き残った者、事件に関与した者、外部で見ていた者。
様々な人々が感じ、そして思った結論は、本当に真実だったのか。
犯人は・・・・・・・・・・・
---------------------------------------------------------------------
公式サイトがあるとはΣ(゚ロ゚ノ)ノ
さて、発売日に速攻で購入した恩田先生の最新作であります。
風邪を引いたのでゆっくりこの週末寝ながら読んでいました。
とにかく久々のサスペンス。
予想だにしなかった1ページ目。
ちっちゃ!
とても凝ったつくりで、もう最初っからドキドキしまくりですよ。
以下,ネタバレあり。
ユージニアの詩から始まり、青い部屋と百日紅(さるすべり)の幻想的なスタートから始まるこの小説。
微妙に幻想的な雰囲気を携えながら、北陸の町での物語が進んでいきます。
日本三大庭園といいますから、もう舞台は速攻でわかるのですが、私は1回だけしかこの町には行っていません。ただ、雰囲気が伝わってきます。
本当に静かな、まさに緋紗子に相応しい町だったのかもしれません。
さて、主人公、というべき人間がはっきりとしていないこの作品ですが、やはり中心となるのは盲目の少女、緋紗子。
ただ、少女というのは事件当時であって、小説の時系列でいえばもはや中年の女性。
過去の事件と現在というこの時間の壁を感じさせる小説です。
日本でも、凶悪事件や世間を騒がす事件は多発しています。
しかし、10年前、20年前の凶悪事件を常に頭に入れて生活をしている人はほとんどいないでしょう。言われれば、「ああ、そんな事件あったなぁ」という程度であるはずです。
関係者以外は。
この作品は、関係者(傍観者)という立場の人を描いた小説ともいえます。
人それぞれ、事件にある程度関与していた。ですがその真実まではわからない。だからこそ、一人一人がその事件について考えたものを事実と思い込んでいるのでしょうか。
関係者もすでに時間の経過で,事実が真実と異なっていることでしょう。
その微妙な人々の意識を,書き表した小説ではなかったでしょうか。
ただ,もう一人の中心人物、雑賀満喜子は、本当に鑑賞者たりえたんでしょうかね。彼女もやはり関係者であり、ただの鑑賞者とはいえなかったのでは。
もし、エンディングから予想される結末から、真実があーだったらとした場合、彼女は自ら鑑賞者としてではなく、当事者として望んではないにしても,全ての人々をミスリードしているわけですし。
ああ、わけわかりません。
ただ、やはり犯人は
あの人だったのでしょうかね。
でもその場合・・・・・結局あの男はどうして行動したのか。
まぁ、彼女に言われて動いたんでしょうけど。
そうだとしたら彼女は何のため協力したのか?なぜ?音のため?ユージニアのため、犯人に協力したということ?それとも逆らえなかった?
よくわかりません。
電話の主は結局誰だったのか?
その辺も考えればわかるのかもしれませんが、まだ一回目では理解しづらいところではあります。
緋紗子は恋をしていたのでしょうか?それとも,やはり自己の世界に陶酔していただけなのでしょうか。
本当に緋紗子そのものの気持ちが理解し辛く,この気持ちさえ理解できれば,真実が明らかになるだろうと思われます。
ただ、このエンディングは何となく想像できた(・∀・)
犯人は、あの人ではないかなぁという気はしていました。その理由は、第三章「遠くて深い国からの使者」。
ここで、何となくそう思いました。
緋紗子=犯人ってあまりにも当たり前すぎだし。
ただ、この
第三章では、緋紗子は「
久代」になっています。
だから、これは「忘れられた祝祭」という本の内容であり、満喜子が書いた小説の中身なんだろうな、とは思います。
久代は仮名,ってことで。
満喜子も全部実名で小説は書かないだろうとは思うのです。
でも、
「順二」は「順二」のままなのね。
なぜ,
自分の弟だけ実名なのか?
ここに、何らかの意味があるのだろうか。
そして名の無い、順二の友人。
最初からの質問者であり、ある意味語り部であるこの女性が感じた、
「幻滅」
という言葉にびっくりしました。
まさに、小説を読んでいる人間に対する挑戦かもしれない。恩田先生のすばらしさ。
単純な小説であれば、当然,満を持して登場する緋紗子に対しては,「冷徹・天才・謎めいた」緋紗子を想像します。
でも現実はどうだろう。
ずっとこの「ユージニア」という小説の中で、緋紗子は神格化しています。
でも、最後に出てきた緋紗子は、本当に神格化されていた程の緋紗子なのか、それとも、全くイメージとは異なった緋紗子だったのか。
幻滅された緋紗子が,本当の緋紗子ではないと誰が言い切れるのか。
いやはや、マジで面白く、一回では楽しみきれない作品のような気がします。
ち。
突っ込めねぇ(・A・)
もう一回読もうっと。
さて,恩田陸版ツイン・ピークスと公式ではいっていますが・・・・
さてはて。
小人が踊って警察官が鏡にごっつんごっつん。
<追伸 2月8日>
そういや緋紗子の母親の名前って出てきたっけ?